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フォーサイツコンサルティング 代表 浅野 睦Blog
▲フォーサイツコンサルティング 代表 浅野 睦Blog

リスクマネジメント協会

株式会社ビジネスブレークスルー


BCP (事業継続計画) BCP評価プログラム

安全管理
安全を管理するとはどういうことか?

安全管理を考えるためには、まず「安全とは何か?」ということのポイントを押さえておく必要があります。多くの人に安全とはどういうことでしょうか?と質問すると最も多く返ってくるのは、「事故がないこと」や「危険がないこと」という答えです。本当に「安全とは事故がないこと」ということでしょうか。例えば、飛行機は「事故がない」ということはありません。しかし、一般的には飛行機は安全な乗り物だとされています。自動車も通常は安全な乗り物であると認識しているはずですが、「事故がない」とは言えません。このように、安全とは「事故がないこと」や「危険がないこと」ではないということなのです。安全とは、「受け入れられないリスクがないこと」を言います。飛行機事故は起こりうるのですが、受け入れられるレベルにまで小さくマネジメントされているから、安全だと言えるのです。自動車も、受け入れられないレベルのリスクではないので、安全な乗り物として利用されているのです。


では、その安全を管理するとはどのようなことを行えばよいのでしょうか。大きなポイントは、以下のように4つあります。


@ 安全を損なう可能性のある状態を見つけること
A 安全が損なわれる要因を洗い出すこと
B @とAの出現をコントロールできる対策を講じること
C 講じた対策が有効に機能しているかをモニタリングすること



@とAは、一般的にリスクアセスメントと呼ばれています。

弊社では、リスクアセスメントを細分化し、リスクの出現をメカニズムとして捉えられるようにしています。
簡単に言えば、「危険源」「危険事象」「危険状態」「危険要因」「危険回避エラー」という項目に分けて分析、評価を行います。

このようにリスク発生の要素を捉えることによって、事故発生に結び付く複数の原因を掴むことが可能となりますので、対策が有効なものになりうるということです。

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なぜ事故は繰り返されるのか?

「わが社では毎年リスクアセスメント活動を行っているのに、なぜ事故やヒヤリハットが減らないのか?
なぜ時々重大事故が発生するのか?」といった質問を受けることがあります。

この原因の多くは、リスクアセスメント活動の質にあります。

多くの企業でありがちなリスクアセスメントの悪い例として、2つのポイントを挙げておきます。

@アセスメントすべき視点が定まっておらず、定性的な抽出になってしまい、アセスメントする人によって評価が分かれてしまうこと

Aリスク出現の要因が捉えきれず、組織の本質的な課題がわからないアセスメントになってしまうこと


この2つです。

このようなアセスメントでは、事故防止の対策が、「従業員のリスク意識を向上させる」「マニュアルを遵守する」「危険予知活動を推進する」といった形だけの表面的な対策ばかりになりがちです。

これでは、何度も事故が発生してしまうなど、リスクマネジメントが機能しなくなってしまうのです。

安全管理を機能させるためには?

従業員のリスク意識向上も、マニュアル順守も、危険予知活動も、すべてリスクマネジメントには大切な事項です。

しかし、従業員のリスク意識が低くなってしまう要因を掴めない状態で意識向上だけ謳っても、対策が機能するわけはありません。
同様にマニュアルが守りにくい要因や危険予知できなくなる要因を掴まなければ、安全管理が機能するわけはないのです。

例えば、赤信号を無視して横断歩道を渡れば、交通ルールを遵守できていないことになります。

しかし、日常的にあちこちで赤信号を平気で無視する人はいます。「急いでいるから」「誰も見ていないから」「車が来なかったから」など、いろいろな理由によってルール遵守が損なわれます。

ルールが無視される要因を事故発生のメカニズムに照らし合わせて分析しない限り、ルールを逸脱する理由が優先されて、いつまでもルール遵守が機能しなくなってしまうのです。

これらはコンプライアンス活動にも言えることでしょう。

弊社では、こうしたルールやマニュアルの遵守を阻害する要因を独自の手法で分析し、組織に潜む事故発生に結び付く課題を捉えるお手伝いをしています。

さらに、安全管理を有効に機能させるためにとった対策が本当に機能しているかどうかを評価し、安全管理のPDCAサイクルを有効に機能させる仕組みを構築します。


事故発生のメカニズムには大きく分類して3つある

事故発生のメカニズムがわからないままでは、どんなに予算をかけて安全対策を講じても、その対策が有効なものかどうかの判断はつかないでしょう。理論的・科学的アプローチで事故発生のメカニズムを捉える必要があります。

ジェームズ・リーズンやシドニー・デッカーなどのリスクマネジメントの専門家たちの理論を背景に事故出現のメカニズムを考えると、「要因連鎖モデル」「潜在化モデル」「相発モデル」の3つのパターンがあります。

要因連鎖モデルは、1つの事象が別の事象を引き起こし、ドミノ倒しのように要因が連鎖することによって引き起こされる事故です。2000年に起きた雪印乳業による食中毒事件は、この要因連鎖の典型事例です。

記録的な猛吹雪⇒氷柱が電気室に落下⇒3時間の停電⇒脱脂乳が温められ病原性黄色ブドウ球菌が増殖して毒素発生⇒殺菌装置で黄色ブドウ球菌を死滅させれば安全と判断⇒食中毒事件発生⇒記者会見の不手際といったように要因が次々に連鎖しました。

次に、潜在化モデルは、普段は表面化しない組織に潜む要因が特定の条件のもとで出現し、その要因が現場の正常な判断を変化させてしまうほどの影響を持ち、事故にいたるといったモデルです。
2005年にJR西日本の福知山線で起きた重大脱線事故は、この潜在化モデルであると言えるでしょう。

「定時運行最優先」という組織の重要目標が、安全運行を阻害する要因になってしまったというケースです。

定時運行そのものは、通常であれば事故の直接的な要因ではないはずですが、定時運行が果たされにくい状況が発生したことによって潜在的なリスクが活性化し、結果的に安全運行がなされなくなってしまったという事故発生メカニズムです。3つめの相発モデルは、従来の事故分析とは一線を画したモデルです。

今まで一般的に事故の発生は、原因と結果、つまり因果関係によって説明されてきました。相発モデルの考え方は事故を因果関係で捉えるのではなく、事故は組織やシステム、個人そのものの当然の結果として発生するものだという考え方です。

さらに相発モデルで重視される着眼点は、「パフォーマンスの変動」という要素です。
組織もシステムも個人も、一定のパフォーマンスを常に同じレベルで継続して発揮するということは不可能で、環境変化や制約条件などの発生により、パフォーマンスは変動し得ます。
その変動パフォーマンスがもたらす事故をモデル化したものが相発モデルということです。

ですから、パフォーマンスの変動要素を分析し、予測することが可能となれば事故の発生を抑制することが可能となるという考え方です。例えばある製造現場で、仕様変更の指示があり、設備の設定を変更したとします。

すると品質エラーが生じ、設備を停止せざるを得ない状況に陥ったが、現場作業員は設備を停止させると歩留まり率に影響したりや納期遅延も発生しうると考え、最善の策として機械を停止させないまま品質チェックをすることが最適と判断し、安全ロックを解除して品質チェックを行ったため事故が生じた、といったものです。

さまざまなパフォーマンスの変動が意思決定に影響して発生する事故のメカニズムをあらわしています。

どのモデルが最も優れたものであるということはありません。事故にはいくつかの発生メカニズムがあって、その特性を知らなければ有効な事故防止にはならないということです。

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ヒューマンエラー対策

ヒューマンエラーにはどのようなものがあるか

ミスをしたことのない人はいません。人間にはミスやエラーがつきものです。しかし、だからと言って繰り返されるミスやエラーを放っておいてよいわけはありません。ヒューマンエラーの特性を知り、その特性に応じた対策を講じれば、ミスやエラーの出現を小さくすることが可能ですし、組織的な事故や不祥事への対策にも役立ちます。ヒューマンエラーの分類には諸説ありますが、弊社では4つの類型で分析・評価を行います。


・記憶系モデル
・注意系モデル
・認知系モデル
・集団系モデル



記憶系モデルは、「やり忘れ」「やりっぱなし」といった人間の「忘れ」が原因で起きるヒューマンエラーです。

注意系モデルは、例えば「熱いものを口に入れてやけどをする」といったもので、不注意の状態で何かをしようとして間違えるといったヒューマンエラーです。

認知系モデルは、いわゆる「思い込み」で、ある事象を間違って認識したまま判断してミスをするといったヒューマンエラーです。

さらに集団系モデルは、ダブルチェックが機能しないなど複数のスタッフで何かを実施しようとするときに依存的手抜きが起きるなどのエラーのことを言います。


ヒューマンエラーの調査・分析を行うための着眼点

ヒューマンエラーの調査・分析は次の失敗を生み出さないようにするためには有効ですが、調査方法を間違えるとかえってリスクが高くなることがあります。

事故は、発生後に分析すれば要因や原因が掴めるので「あの時こうすればよかったはずだ」とか「なぜ、こんな簡単なことを実施しなかったのか」などの防御策について語ることができます。

しかし、事故が起きる前の状態でその防御策を講じることができる状態にあったかと言えば、それができないから事故は発生したということであるはずです。

そうだとすれば、「すべきだった」という事故防止のための対策不備を指摘するよりも、なぜ事故発生前の状態で適切な判断ができなかったのか、なぜ事故発生の予見や認識ができない心理状態であったのかを明らかにすることの方がずっと大切なのです。

つまり「その状況において なぜその判断が合理的だと認識したのか」を分析することが大切だということです。

その意味で、特にヒューマンエラーに起因する事故が発生した場合には、以下の4つのポイントを踏まえて調査を行う必要があります。

1.調査目的を次のヒューマンエラー発生防止に限定すること
2.犯人探しをしないこと
3.結果論として事故防止のために行うべきであったことを詳細に指摘しないこと
4.事故当事者の意識やモラルに限定した追及をしないこと


特に、犯人探しをしないことは真の事故原因を把握する上で大切なことです。
航空業界の事故やインシデントの調査では、十分注意しつつ避けられなかったと判断されるヒューマンエラーについては懲戒の対象としないというポリシーがある航空会社もあります。

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